事業を通じた社会課題の解決 ニチレイフレッシュ
日本のあさり供給量のうち、6割にあたる量が中国からの輸入※1によるものであり、あさりの主要生産地である黄海沿岸の豊かな自然によって日本の食が支えられています。しかし、沿岸の埋め立てを伴う開発が急速に進んだことなどを理由とした干潟の減少や、過剰な漁獲も問題となっていました。こうした問題により、資源の減少や、生産現場である自然環境への影響が懸念されてきました。このため、鴨緑江河口域において、豊かな生産性のある湿地帯の保全活動を実施する必要性がありました。
●鴨緑江河口域における環境・生態系の調査
ニチレイフレッシュは2006年から中国産あさりを「こだわり素材」として取り扱いを始めました。あさりの産地である鴨緑江河口域での環境も日々変化しており、開発による埋め立てを原因としたあさりの浜の減少や、塩田の養殖に使用される農薬のあさりへの影響などの課題について調査していました。
WWFは2007年から2014年に行った黄海エコリージョン支援プロジェクトの中で、鴨緑江河口域での渡り鳥・沿岸漁業・底生生物の生態的なつながりの調査を実施しました。また、その結果をもとに生物多様性の保全や持続可能な水産業の推進に関して中国の行政府に提言を行いました。
●漁業改善プロジェクトの開始
ニチレイフレッシュとWWFは2011年より鴨緑江河口域でのあさりについての情報交流を開始し、2015年に持続可能な水産物の生産と消費の促進を通じて黄海の生物多様性を進めることで考えが一致しました。
ニチレイフレッシュは、あさりの加工会社である
漁業改善プロジェクトは、①資源の持続可能性、②漁業が生態系に与える影響、③漁業の管理システム、の3つの原則で構成されるMSC認証制度の漁業認証規格を満たすことをゴールに設定し、段階的に漁業の改善を進めていくプロジェクトです。予備審査で洗い出された課題をもとに、調査を通じて漁業が生態系に影響を与える可能性を明らかにし、漁業管理計画の議論を通じて中長期的にわたる適切な管理を促進するなど、あさり漁業の改善が行われました。
改善までの道のりは簡単ではなく、プロジェクト開始当初は順調に進まない時期もありましたが、関係者で話し合いを重ね、政府関係者の協力も得ながら、粘り強くプロジェクトは進められました。
●MSC漁業認証の取得
漁業改善プロジェクトの結果※3、あさり漁業は2020年1月にMSC本審査入りし、2021年9月に審査が終了、MSC漁業認証の取得に至りました。これにより、認証を取得したあさり漁業が、渡り鳥の休息や採餌に欠かせない黄海沿岸域の豊かな自然環境に配慮した持続可能な漁業と認められました。
今回の鴨緑江河口域のあさり漁業のMSC漁業認証の取得は、漁場から加工、商品までをつなぐ中国と日本のサプライチェーン上の関係者が協働する漁業改善プロジェクトを通じて実現した、中国では初めての事例となりました。
●ジャパン・サステナブルシーフード・アワードでの受賞
今回のプロジェクト「中国・黄海沿岸域での漁業改善プロジェクトを通じたあさりのMSC漁業認証の取得」が評価され、2022年10月の第4回ジャパン・サステナブルシーフード・アワード、コラボレーション部門で「チャンピオン」を受賞しました。今回の受賞は、ニチレイフレッシュだけでなく、丹東泰宏食品有限公司、WWF中国、WWFジャパンとの協働で、4社での受賞となりました。
●MSC漁業認証製品の普及へ向けて
ニチレイフレッシュはこれからも生物多様性の保全と水産物の持続可能な生産の両立を推進し、MSC漁業認証のあさり製品の普及に努めていきます。