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生物多様性保全(TNFD)

方針・基本的な考え方

TNFD 生物多様性保全への取り組み

ニチレイグループは食を中心にグローバルで多岐にわたる事業を展開しており、当社事業は農・畜・水産資源をはじめとした生物多様性から生み出される地球の恵みによって成り立っています。地球の恵みである自然資本と生態系サービスに大きく依存している一方で、事業活動によりさまざまな影響を与えていることを認識し、「ニチレイグループ生物多様性方針」に基づき、サプライチェーンにおける生物多様性の保全と自然資本の持続可能な利用に取り組んでいます。
株式会社ニチレイは2024年3月、自然関連財務情報開示タスクフォース(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures、以下TNFD)の理念に賛同し、その活動を支援するTNFDフォーラムに参画しました。今後はTNFDの情報開示フレームワークに基づき、当社の事業と自然資本との関係性やリスクと機会の整理を行い、事業活動において適切な対応を進めるとともに、自然資本に関する適切な情報開示を進めていきます。

TNFDロゴ

株式会社ニチレイ 経営企画部, 株式会社ニチレイ 品質保証部, 株式会社ニチレイ 技術戦略企画部, 株式会社ニチレイ 経営監査部, 株式会社ニチレイ 事業経営支援部, 株式会社ニチレイ 法務部, 株式会社ニチレイ 人事総務部, 株式会社ニチレイ 財務IR部, 株式会社ニチレイ 経理部, 株式会社ニチレイ サスティナビリティ推進部, 株式会社ニチレイフーズ, 株式会社ニチレイフレッシュ, 株式会社ニチレイロジグループ本社, 株式会社ニチレイバイオサイエンス, 株式会社日立フーズ&ロジスティクスシステムズ, 株式会社ニチレイビジネスパートナーズ

マネジメント体制

ニチレイグループでは、「自然との共生」をグループ環境方針の3つの重点課題の柱の一つとして、環境保全活動に取り組んでいます。事業活動において、持続可能な素材や加工品の積極調達、取引先や地域と協力して行う循環型システムの構築、事業所や調達先での生物多様性保全や環境啓発活動、情報発信などを行っています。
取り組みは事業会社ごとの年八回行われる「環境担当者会議」と年三回以上行われる「グループサステナビリティ委員会」において報告され、内容・進捗に応じてグループ全体の環境保全に関する方針・政策を策定しています。2023年より実施しているTNFDの情報開示フレームワークに基づいた生物多様性の取り組みについても、上記グループサステナビリティ委員会の中での審議を経た上で、開示へつなげています。

株式会社ニチレイ 経営企画部, 株式会社ニチレイ 品質保証部, 株式会社ニチレイ 技術戦略企画部, 株式会社ニチレイ 経営監査部, 株式会社ニチレイ 事業経営支援部, 株式会社ニチレイ 法務部, 株式会社ニチレイ 人事総務部, 株式会社ニチレイ 財務IR部, 株式会社ニチレイ 経理部, 株式会社ニチレイ サスティナビリティ推進部, 株式会社ニチレイフーズ, 株式会社ニチレイフレッシュ, 株式会社ニチレイロジグループ本社, 株式会社ニチレイバイオサイエンス, 株式会社日立フーズ&ロジスティクスシステムズ, 株式会社ニチレイビジネスパートナーズ

取り組みの状況

戦略
重要度の高いリスクと機会の特定

当社グループは食を中心にグローバルで多岐にわたる事業を展開しており、生物多様性が生み出す自然資本により成り立っています。当社事業活動の自然資本への依存と影響の大きさをふまえ、TNFDが提唱するフレームワークにより評価を行いました。特定したリスク・機会をより定量的に把握し、その対応を経営戦略に反映させることで、持続可能な企業を目指していきます。

2023

ニチレイグループ事業全体へのリスクと機会を把握するため、TNFDが提唱するLEAPアプローチによって評価を実施しました。今回の分析では、バリューチェーンにおける上流(原材料調達地域)、および直接操業(グループ全事業所202拠点)を対象としています。その評価結果に基づき、グループ共通の最重要リスクとして「水資源」を特定し、水ストレスの高い拠点に対する具体的な取り組みを先行してスタートしました。「水資源」「農・畜・水産資源」の観点を含めた生物多様性の保全と回復に向けた取り組みを進めていきます。

1.事業活動における自然への依存・評価

当社グループの事業は、自然資本と生態系サービスに大きく依存しています。当社の事業における自然との関係性を整理するため、バリューチェーンの上流と直接操業において重要な依存と影響を特定し、その依存・影響度合いを評価しました。

事業活動における自然への依存・評価

2.バリューチェーン上のリスク・機会の抽出

当社グループの事業と自然関連の依存・影響との結びつきを理解するため、上流・直接操業と影響・依存の象限に分類し、事業におけるリスク・機会の抽出を行いました。

バリューチェーン上のリスク・機会の抽出

3.重要度の高いリスク・機会の特定

抽出したリスク・機会について、当社グループの事業における発生可能性と影響度を考慮した重要度評価を行い、事業に及ぼす財務的影響の大きい項目をニチレイグループのリスク・機会として特定しました。

重要度の高いリスク・機会の特定

リスク管理

当社が事業活動を行ううえで自然関連リスクを含むさまざまなリスクが事業経営へ及ぼす影響については、全体的視点から合理的かつ最適な部門・方法で管理し、代表取締役社長を委員長とする「グループリスクマネジメント委員会」で審議・検討しています。当社の事業経営に関わる重大なリスクへの対応について当委員会でマネジメントしていますが、ESGに関わるさまざまな社会課題への迅速かつ的確な対応が求められる中、生物多様性を含むESGリスク・機会への対応に特化した審議を、別途「グループサステナビリティ委員会」にて行っています。
グループサステナビリティ委員会では、ニチレイグループにとって重要なESG課題やリスクに関するテーマを各事業会社の経営企画部門・サステナビリティ部門とともに抽出し、最も重要なテーマが委員会にて審議されます。特に、気候変動や生物多様性を含む環境に関するリスクは全社重要リスクの一つとして位置づけており、シナリオ分析等で得られた事業リスクと機会への対応は、当該委員会の中で審議・管理をしていきます。

指標と目標

ニチレイグループ重要事項(マテリアリティ) 「持続可能な食の調達と循環型社会の実現」

グループ目標(KPI) 水ストレスが高い拠点における水使用量削減の取り組み 高リスク拠点での水使用量の削減に取り組み、水保全活動を推進する(2030年度目標)
ニチレイグループの自社拠点や社有地における生物多様性保全活動の実施 自社拠点における動植物の種の保存を含む、生物多様性の回復活動に取り組む(2030年度目標)
生物多様性保全への取り組み
あさり漁業で「MSC漁業認証」を取得~生物多様性の保全と持続可能な生産の両立を実現~

日本が輸入しているあさりの約60%の主要生産地は中国の黄海沿岸の湿地です。ニチレイフレッシュは2006年よりこの中国産あさりを「こだわり素材」として調達していましたが、年々減少していくあさりの収穫量や自然環境の悪化を懸念してきました。
2016年、持続可能なあさりの調達を目指したいニチレイフレッシュと黄海沿岸域(鴨緑江河口域)の生物多様性保全を提言していたWWFの想いが重なり、あさりのサプライヤーである丹東泰宏食品有限公司とともに漁業改善プロジェクトをスタートさせました。※1
2021年9月にMSC漁業認証※2取得し、鴨緑江河口域のあさり漁業が、渡り鳥の休息や採餌に欠かせない黄海沿岸域の豊かな自然環境に配慮した持続可能な漁業と認められました。このあさり漁業のMSC認証の取得は、中国と日本のサプライチェーン上の関係者が協働する漁業改善プロジェクトとして中国では初めての事例となりました。
今後もニチレイフレッシュは持続可能な漁業認証であるMSC水産品の取り扱いを高めていきます。

  • ※1この漁業改善プロジェクトは2019年4月に完了しました。
  • ※2MSC認証:MSC(Marine Stewardship Council:海洋管理協議会)による持続可能な天然水産物の認証

鴨緑江河口域沿岸湿地生態系の主要素

鴨緑江河口域沿岸湿地生態系の主要素

福島県裏磐梯の自然環境調査・環境および生物多様性の保全活動を支援

ニチレイグループは福島県裏磐梯の桧原湖周辺に土地を所有しており、周辺の自然環境の調査と、それにもとづく環境や生物多様性の保全活動の支援を行っています。裏磐梯の所有地周辺は1888年の磐梯山の噴火によって植生が消失しましたが、130年以上経過したことにより、アカマツ林、シロヤナギ、ヨシの湿地、湖沼の水生植物群落など、遷移途中の植生を見ることができます。一方、裏磐梯高原には、この地に緑を蘇らせようとした人々によって植林されたアカマツの林が広がっていますが、当社社有地には植林地がなく、ほとんど手つかずの自然の遷移の様子を観察できる、学術的に貴重な土地となっています。ニチレイでは2011年度より、福島大学大学院共生システム理工学研究科実践教育推進センターの自然共生・再生プロジェクト部(2016年より福島大学プロジェクト研究所「磐梯朝日自然環境保全研究所」)が実施する裏磐梯の自然に関する調査への支援を行ってきました。2019年度は「裏磐梯地域にある株式会社ニチレイ社有地内のヨシ湿地の昆虫相解明」と「『裏磐梯植物誌』出版を目指した植物の種多様性研究」に対する支援を実施しました。

  • 裏磐梯地域の湖沼における水質調査裏磐梯地域の湖沼における水質調査
  • 新種の可能性の高いヒメシロカゲロウ属新種の可能性の高いヒメシロカゲロウ属
絶滅危惧種アツモリソウの保護活動支援

ニチレイグループは、長野県富士見町で洋ランをはじめとする園芸植物の研究・育種を行っていたことなどから、2003年度よりホテイアツモリをはじめとするアツモリソウ類の保全再生活動に参加しています。2014年には人工増殖によるホテイアツモリの開花に成功し、 2019年度には32株が開花するという成果を上げました。2019年2月、長野県と富士見町、そして富士見町アツモリソウ再生会議と当社との間で「生物多様性保全パートナーシップ協定」を締結。アツモリソウ類の保全再生に必要な技術提供や、活動に必要な経費の一部を支援しています。2021年6月には、人工増殖させた株・苗を販売することができるまでになりました。販売する目的は、山野で生息している天然の固有種の乱獲を防ぐためです。人工授粉は同一系統の株間での交配は極力避け、遺伝的多様性の保全に十分配慮しています。

株式会社ニチレイ 経営企画部, 株式会社ニチレイ 品質保証部, 株式会社ニチレイ 技術戦略企画部, 株式会社ニチレイ 経営監査部, 株式会社ニチレイ 事業経営支援部, 株式会社ニチレイ 法務部, 株式会社ニチレイ 人事総務部, 株式会社ニチレイ 財務IR部, 株式会社ニチレイ 経理部, 株式会社ニチレイ サスティナビリティ推進部, 株式会社ニチレイフーズ, 株式会社ニチレイフレッシュ, 株式会社ニチレイロジグループ本社, 株式会社ニチレイバイオサイエンス, 株式会社日立フーズ&ロジスティクスシステムズ, 株式会社ニチレイビジネスパートナーズ