気候変動の影響は年々深刻さを増し、気候変動が原因の一つとされる異常気象・自然災害が多発し、自然の恵みを享受 して事業を行うニチレイグループにとって重要な社会課題であり事業継続に対する脅威と認識しています。
ニチレイグループでは、2020年6月、TCFD提言への賛同を表明するとともに、「TCFDコンソーシアム」に参 画しました。気候変動への取り組みは、長期経営目標「2030年の姿」の実現に向けたグループ重要事項(マテリアリティ) の一つとしても位置づけており、気候変動に関連する社会課題の解決に向け、積極的に取り組みを進めています。
気候変動に伴う外部環境の変化によって及ぼされるリスクへの適切な対応を進めるとともに、新たな事業機会の想定も 踏まえた複数のシナリオを検討し適切に開示していきます。
ニチレイグループでは、気候変動を含めたサステナビリティ全体の戦略策定や進捗管理を行うグループサステナビリティ委員会を設置しています。グループサステナビリティ委員会は、持株会社の代表取締役社長を委員長とし、気候変動担当役員、社外取締役と社外監査役を含む全役員、各事業会社の経営企画部門・サステナビリティ部門の関係者をメンバーとしています。ここで審議・検討された気候変動に係る戦略や目標値などは、気候変動担当役員より取締役会に答申・報告を行い、適宜、戦略や目標、計画の見直しを行っています。2021年度までは、グループ環境保全委員会がこの機能を担っていましたが、気候変動を含む広範なサステナビリティ課題へ対応するため、2022年4月に持株会社へサステナビリティ推進部を創設、グループ環境保全委員会の機能も引き継ぎ、当該部署を事務局とするグループサステナビリティ委員会が創設されました。2019年より実施しているシナリオ分析の内容についても、上記委員会の中で審議されており、今回の開示内容については、2023年7月に開催された同委員会の審議を経て、開示に至っています。
当社グループは、食を中心にグローバルで多岐にわたる事業を展開しており、気候変動による影響を多方面に受けることが予想されます。気候変動が事業活動に及ぼす影響について、シナリオ分析を行っています。特定したリスク・機会をより定量的に把握し、その対応を経営戦略に反映させることで、持続可能な企業を目指していきます。
ニチレイグループ全体のリスクと機会について2つの気候変動シナリオに基づく重要度の評価を行い、グループ共通の最重要リスクとして[低炭素政策全般(CO₂排出量削減)]を特定。長期CO₂排出量削減目標を定め、取り組みをスタートしました。
事業 | リスク | |||
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食品事業 | チキン | 現行 | 異常気象全般 |
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コメ | ||||
エビ | 洪水/海面上昇 |
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野菜・水産品・ 畜産品 |
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共通 | 1.5 ℃ |
低炭素政策 |
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サプライチェーン上の 環境対策 |
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低温物流事業 | 現行 | 異常気象全般 |
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1.5 ℃ |
低炭素政策 |
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事業 | 機会 | ||
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食品事業 | 現行 | 気象パターンの変化 |
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1.5 ℃ |
サプライチェーン上の 環境対策強化 |
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環境意識の高まり |
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低温物流事業 | 現行 | 異常気象全般 |
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1.5 ℃ |
モーダルシフト |
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環境意識の高まり |
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●評価項目
ニチレイフレッシュが調達しているエビの上位3ヵ国(インドネシア・ベトナム・タイ)における主要産地(計11拠点)の生存率(Survival Rate)※と成長エビの体長(=重量)を評価
●対象となるエリア
●測定条件
●評価結果(気候シナリオ RCP8.5)
リスク | 機会 | |
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物理変化による影響 (現行シナリオ) |
後期幼生体(稚エビ)は2020年対比で生存率最大3割程度低下 | エビの体長は2020年対比で最大3割程度増加 |
移行シナリオにおける影響 | 炭素価格転嫁に伴う生産・調達コストの上昇 | 長期視点での消費者需要変化への対応、持続可能な認証原料の調達および生産者支援 |
●産地評価(気候シナリオ RCP8.5)
成長エビの体長増大効果 | |||||
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特大 | 大 | 中 | 小 | ||
生存率低下影響 | 大 | ① インドネシア・タラカン ③ インドネシア・東ジャワ ④ インドネシア・南スラウェシ |
⑪ タイ・サムットソンクラーム県 | ⑨ タイ・チャンタブリー県 | |
中 | ② インドネシア・ランプン | ⑥ ベトナム・カント | ⑤ ベトナム・ソクチャン ⑩ タイ・ラヨーン県 |
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小 | ⑦ ベトナム・ダナン | ⑧ ベトナム・フエ |
主要インドネシア4拠点では体長増大効果が他地域と比べ高い。後期幼生体期では生存率低下の影響が大きいものの、ハッチェリー(孵化場)での室内飼育期間であるため、空調制御などにより影響は限定的と考えられます。
●エビの生育期間別の生存率結果
バナメイエビ生育ステージと気候変動による影響
●成長エビの体長予測マップ
RCP8.5(4.0℃上昇)時における2090年バナメイエビ体長予測(抜粋)
(2020年度実績を100としたときの相対値)
エビ事業への財務影響はサプライヤーコスト負担に起因する買付けコストアップと、高価格帯サイズ商品の市場流通に起因する諸影響が想定されます。中長期的には高たんぱく質食品であるエビが安定的に流通できるという社会的価値の訴求効果が期待されます。
当社が事業活動を行ううえで気候変動を含むさまざまなリスクが事業経営へ及ぼす影響については、全体的視点から合理的かつ最適な部門・方法で管理し、代表取締役社長を委員長とする「グループリスクマネジメント委員会」で審議・検討しています。当社の事業経営に関わる重大なリスクへの対応について当委員会でマネジメントしてきましたが、ESGに関わるさまざまな社会課題への迅速かつ的確な対応が求められる中、気候変動を含むESGリスク・機会への対応に特化した審議を、別途2022年度に新設した「グループサステナビリティ委員会」にて行うこととしました。
グループサステナビリティ委員会では、ニチレイグループにとって重要なESG課題やリスクに関するテーマを各事業会社の経営企画部門・サステナビリティ部門とともに抽出し、最も重要なテーマが委員会にて審議されます。特に、気候変動シナリオにおけるリスクは全社重要リスクの一つとして位置づけており、シナリオ分析で得られた事業リスクと機会への対応は、当該委員会の中で審議・管理をしていきます。
ニチレイグループ重要事項(マテリアリティ) 「持続可能な食の調達と循環型社会の実現」
グループ目標(KPI) | 水産事業における水産物の持続可能な水産物調達ガイドラインに準じた調達率 | 100% (2024年度目標、2030年度目標) |
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上記水産物調達率のうち、MSC・ASC認証品等のグローバル水産物認証品比率 | 32% (2024年度目標) 50% (2030年度目標) |